膜のように薄く、軽いイメージから「maku」と命名
こちらのチェアは、2001年に宮崎椅子製作所がデザイナーとワークショップ形式で開発したオリジナルデザインの椅子第一号である「KKチェア」をアップデートさせたアイテムです。一時製造休止していましたが、数年前に宮崎椅子製作所が「インチ材の薄い材から無駄のない軽い椅子を作ろう」という新しい取り組みがスタートした際に、村澤氏のお気に入りでもあったKKチェアにもう一度チャレンジしたいという思いから復刻しました。ただ復刻ではなく材料に合った形で変換させ、20年間の思いとともにアップデートしました。
キーワードは「KKチェアの原型としてのかたちは活かす」「薄いインチ材の形状を生かした軽量化」「大幅ダウンサイズ」。
とはいっても、単に四角い棒で作ってしまうと宮崎椅子の良さがないので、断面にこだわりました。
前後の脚は元々平たい1インチ材。そのままだと角張って軽快なイメージに欠けるので、背のしっかりした曲面を活かしテーパーをつけることで見た目のスリムさと軽快さを持たせました。
また、綺麗な継ぎ目の構造にも試行錯誤しました。薄い材を使っているので、割れが起きたり糊のはみ出しが起きないように、前後貫の逃がし方にも工夫が施されています。これまで村澤氏デザインの作風は、代表作PePeチェアのように丸っぽくフィンガージョイントでつなげるものが多かったですが、改めて「木と木が出会う場所の刺激が大切」という気づきもありました。
さらに軽量化を進める中で、椅子の重量の多くを占める合板やウレタンの重さをどうやって無くせるかというところで、座面には宮崎椅子製作所初のペーパーコードが採用されました。
他の張地も実は合板を使用していないので、非常に軽い仕上がりになっています。合板の上に載せるのではなく、張地を巻き込ませてあります。これは、現場職人の知恵が活かされたもので、 職人とデザイナーが、いっしょに現場の工房で手を動かし、木粉にまみれながら生みだすワークショップ方式のデザイン開発の真骨頂でもあります。
座面はぺーパーコード巻、アクリルテープ巻、ファブリック張込から選べます。樹種や張地にもよりますが、椅子の重量は約3kg前後と比較的軽い部類の椅子に仕上がっています。
[DESIGNER]
村澤 一晃
ムラサワカズテル
1965年東京生まれ。垂見健三デザイン事務所を経て1989年にイタリアへ留学。1990年よりセルジオ・カラトローニデザイン建築事務所(ミラノ)に勤務。1994年ムラサワデザイン開設。「デザインは生活や行動のすべての中にある」を信条として、現場で手を動かし、それぞれのメーカーと関係を育てていく股旅デザイナー。これまでに国内外200以上の向上を歩き回り、道を歩くとき、飛行機で移動するとき、稼働する工場を見つめるとき、誰かと会話するとき、そこからデザインを紡ぎ出していく。これまでに20製品がグッドデザイン賞を受賞。
[BRAND]
宮崎椅子製作所
ミヤザキイスセイサクジョ
1969年創業。四国・徳島県のに拠点を置く、木の椅子づくり専門の家具メーカー。家具デザイナーの村澤一晃と小泉誠を中心に、Inoda+Svejeほか幾人かのデザイナーと職人が、現場で手を動かしながら生みだすワークショップ方式のデザイン開発。 機能性や利便性といった価値を椅子にそなえると同時に、さまざまなチャレンジやアイデアで、新しい方向性を見つけだしています。