マルニ60誕生ストーリー

マルニ60(ロクマル)とは

ライフスタイルに合わせて、フレキシブルな組み合わせが選べると人気のマルニ60。

マルニ60の「60」は、1960年代の「60」。1960年代のロングライフ製品を復刻生産する「60VISION(ロクマルビジョン)」に参加して立ち上げたマルニ木工のブランドです。

半世紀を経ても古びることなく、むしろスタンダードとしてファンを増やし続ける家具。スタンダードだからこそ、時代に合わせて変化を受け入れる家具。そんなロングライフデザイン家具として、確固たる地位を築き上げたマルニ60の誕生ストーリーを振り返ってみたいと思います。

マルニ木工の創世期

  • 現在のマルニ木工本社
  • 本社が位置するのは広島市北西部の山あい

マルニ木工の始まりは、1928年(昭和3年)に前身である昭和曲木工場の設立。"工芸の工業化"をモットーに、当時ほとんど行われていなかった分業による一貫生産によって家具づくりを開始しました。

1933年(昭和8年)に昭和曲木工場は当時ライバルであった沼田木工所と合併し、マルニ株式会社に改名します。 そして、2つの輪が繋がった当時の社章には、ライバルであった昭和曲木工場と沼田木工所が「手を握りあって、力強く前進していこう」という強い願いが込められていました。


社章が示す輪は「和」を意味し、メーカーであるマルニ木工とお客様との絆を深め、関係を大切にしていくということも意味しています。 そしてこのロゴはマルニ木工の象徴でもあり、1988年家具式会社マルニに変更された際に一新されたロゴや、2006年に立ち上げたマルニ60ブランドのロゴマークのベースにもなっています。

成長期を経て「技術のマルニ」へ

1940年代に入ると太平洋戦争が始まり、家具の生産は停止。確かな技術を買われたマルニは軍需工場に指定され、多数の軍需品製造にあたるようになりましたが、戦後いち早く立ち直る最初のきっかけは、進駐軍からの家具の大量注文でした。提示された仕様書に基づいて生産された家具は、マルニ木工の洋家具への方向性を明確にしました。

戦後、マルニ木工は木材の人工乾燥技術の研究開発をはじめ、高度な木工加工表現のため新技術の開発導入、合理的な生産方法の習得など材料から完成まであらゆる工程での改革を進め「技術のマルニ」と評される礎を築きました。
そして、生産方式を革新し、大量生産を可能としたマルニ木工は、成長期を経て確立期へと入ります。

「No.79」応接セットの発売

  • 「No.79」セパレート型 発売当時のカタログ
  • 「No.79」応接セット

1960年「No.79」応接セットが発売開始されます。のちに「みやじま」と呼ばれ、2006年に「マルニ60」として復刻されることとなる原型モデルです。
そして、この「No.79」の誕生を語る上で欠かせないのが、アメリカ・ミッションファニチャー社のグッドマン氏です。

グッドマン氏はミッションファニチャー社との取引相手を求め、1959年にアメリカから来日しました。
しかし、東京を中心に各地のメーカーを打診したものの、満足する企業は見つけることは出来ませんでした。
彼は失望して帰国しようとした直前、広島にあるマルニ木工の存在を知ることとなり、マルニ木工本社を訪ねました。
これまで日本で見てきた企業とは違い、マルニ木工の工場規模の大きさと高水準の技術に感銘を受けました。
この出会いにより、アメリカ・ミッションファニチャー社とマルニ木工の取引が始まります。

そして当時、彼が持ち込んだ「DA-1」と呼ばれるノックダウン(組み立て)式のアームチェアこそが、現在のマルニ60オークフレームチェアの原点でもある「No.79」なのです。輸出用フレーム「DA-1」を国内販売し好評を得たのが「No.79」なのです。

愛称を「みやじま」へ

  • 1970年のカタログ
  • モチーフとなった広島県宮島・厳島神社の大鳥居

1960年に誕生した「No.79」は、発売開始から瞬く間に人気を博しました。アームの形が広島県宮島にある厳島神社の大鳥居をモチーフにしたことから1970年のカタログより「みやじま」と愛称がつけられ1977年まで続いた当時としては寿命の長い製品でした。
発売当時、戦後の急速な日本経済の発展のなか、住宅環境の洋風化は進んでいくものの、住居スペースは大きな洋家具に適応するには十分でなかったそうです。

そんな住宅環境にいち早く対応すべく、どんなスペース・どんなレイアウトでも全体のバランスを崩さない、機能重点主義リビングセットとして発売されたノックダウン式のが「No.79(みやじま)」のがロングヒットした理由の一つでもあります。

ちなみに、「No.79」というのは当時の品番です。フレームチェアから少し話がそれますが、1958年に発売された「No.35 デラックス型小椅子」もマルニ60アイテムの原型モデルにひとつです。1961年に「デルタチェア(ファーストモデル)」として発売。1978年にリモデルし、更に2017年にマルニ60ブランドより復刻、幾度もアップデートされながら再販されてきました。強度的にも理にかなったロングライフデザインで、発売当初のモデルは「オールドデルタ」と呼ばれ、現在でもユーズド市場で人気を博しています。

「マルニ60」ブランドとして復刻

「No.79(みやじま)」の廃番から30年の歳月を経った2006年、マルニ木工は60VISION(ロクマルヴィジョン)プロジェクトに参加。「マルニ60」ブランドの「オークフレームチェア」として復刻させました。
発売当時の「No.79(みやじま)」の造形はそのままに、座り心地や使い勝手をアップグレード。張地バリエーションやた材種・塗装色も現代のライフスタイルに合わせ変更され、「オークフレームチェア」シリーズに新たな息吹が吹き込まれました。

「天然木の風合いをいかしたナチュラルな塗装」「美しいアームトップの仕上げ」「外からボルトが見えないデザイン」等、熟練の職人の技術で美しく、機能的なデザインに仕上げられたオークフレームチェア。
グッドマン氏によって持ち込まれた「DA-1」の遺伝子も引継ぎ、4本のボルトをとめるだけで、女性でも簡単に組み立てが出来る「ノックダウン式」の姿も変わりません。

また、再編集された「マルニ60」ブランドには、1960年代当時にはなかったテーブルやダイニングチェアなどのアイテムも追加し、古びることのないスタンダードなデザインは多くのファンを増やし続ける商品ラインナップとなっています。

流行に流されないものづくりの姿勢

1960年代を中心に生まれたシンプルで普遍的なデザインとその商品に込められた作り手の想いや歴史。 長い長い時間を経て、私たちの暮らしは多様化し大きく変化を遂げたものの、「住む」「インテリアを楽しむ」といった基本的な行為はいつの時代も変わりません。

決まった様式にとらわれず、自由な組み合わせを楽しめるオークフレームチェアは、多くの人々が限られたスペースを要される都会に住む現代だからこそ、必要な家具と言えるのではないでしょうか。

最早くつろぐだけのソファに留まらず、構造やクッションの質にこだわり座り心地が良いのはもちろんのこと、昭和3年から続く歴史を引き継いだ、名作チェアといっても過言でないストーリーを味わえるマルニ60 オークフレームチェア。

時代を経て何らかの理由で製造中止や廃番になったものの中には、普遍的な価値を持っているものも少なくありません。マルニ60は、そのような価値を持ったアイテムを復刻するとともに、当時は存在しなかった今の時代にも適応するプラスαのアイテムを付加することで構成されています。

マルニ60はこれからも、流行に流されないものづくりの姿勢と、原点である創業者の想いと情熱を持ち続けると同時に、遊び心や楽しさという視点も忘れず、豊かな生活に繋がるような挑戦を続けています。